今年六月八日に出土品が国の重要文化財に指定された草戸千軒町遺跡は、鎌倉時代中頃~戦国時代の初めにかけて芦田川の河口に存在した市場町です。草戸千軒町遺跡の時期は、武士達が興亡を繰り返していた時代に重なりますが、備後南部の武士達と草戸千軒町遺跡の関係についてはほとんどわかっていません。当時の状況を語る文献資料が極めて少ない中で、草戸千軒町に本拠地を置いた可能性が指摘されている武士である渡辺氏の歴代の動向を記したものが、「先祖覚書」です。
この資料は、戦前に精力的に活動し福山の郷土史への功績が大きい郷土史家・浜本鶴賓氏のペン書きによる写しによってその存在が知られていましたが、原本となった資料の所在は長く不明となっていました。近年、浜本氏写本の元になったとみられる江戸時代の写本が岡山県井原市で発見され、その存在を紹介した小林定市氏の仲介で、当館に寄託されることになりました。
11月の特設展示では、草戸千軒町遺跡出土品の重要文化財指定と当館開館15周年を記念して、これまで幻の文書であった「先祖覚書」と同書と共に発見された渡辺氏関連資料を紹介します。