日本画家・木村光宏は日展を活動の拠点とする、東海地方を代表する日本画家です。本展は古川美術館で三回目となる木村光宏の個展として、画業の原点を振り返りつつ、今の木村光宏の境地を展覧いたします。
現在東海地区の重鎮として活動する木村光宏は、日展の特選を受賞した「ピエロ」「生」の画業初期には、人物画を描いていました。しかしその後、人物群像を描くようになります。この頃から人物の背景にあった自然に着目するようになり、人物に背景を足していく“足し算”の表現ではなく、自然が作り出した完成した風景から、自身が感動したものを抽出していく“引き算”の表現を求めるようになります。そして風景画家・木村光宏が誕生したのです。しばらくは色鮮やかな風景作品を発表しますが、次第に心の内面を見つめるかのように抽象的世界へ展開していきます。最近では箔を使用した抽象的な風景画作品を制作しています。それらの作品の根底にはこれまで木村が出会ってきた海、山、滝、湿原など様々な土地の美しい風景があります。そしていかなる風景を描こうとも、木村が描き出した作品は≪我が行いは絵心の想うがまま≫という境地でもあるでしょう。また、分館爲三郎記念 館では、「喜々想描-花・風景」と題して、美しい花や風景を描いた作品を数寄屋建築に展示します。古川美術館・分館為三郎記念館両館を通して、常に自身の新しい表現を模索し続ける木村光宏の魅力をご堪能下さい。