あたたかな日差しを受けた山々は、一斉に木の芽を吹き出し、新緑に染まっていきます。淡い緑、濃い緑、黄色がかった緑、鮮やかな緑・・・言葉にはしきれないほどのたくさんの緑が山にあふれ、ゆっくり、本当にゆっくりとその色を変化させていきます。
ロウバイや梅、桜の香りをのせた風がやさしく吹き、柔らかな葉がさわさわと揺れる情景は、まるで山そのものが、ようやく訪れた春の喜びを楽しみ、笑っているかのようです。
この季節になると、富弘さんは学生の頃から、毎日のように一日一日と変わっていく春を見つめていました。山を眺める時間は、電動車椅子に乗るようになってからも大切なひとときとして続きます。心に写し取られたふるさとの風景は、創作の原点にもつながり、詩画作品に描かれる草花を、よりいっそう輝かせています。
本展では、春の代表作品や近作を含む約80点を展示しています。ぜひ、ご覧ください。