爲三郎記念館(古川美術館分館)は、初代館長古川爲三郎(1890-1993)が終の棲家とした1934年(昭和9年)建立の数寄屋の邸宅です。爲三郎は映画や飲食産業を中心に様々な事業を成功させ、奉仕の精神で地域の発展に尽力し名古屋の文化全体に大きな功績を残しました。103歳の長寿を全うしたのちは、邸宅を憩いの場として公開しています。邸内には芸どころ名古屋を象徴する茶道や香道の意匠が施され、訪れる人との心の通い合いを感じさせます。庭園には「大木には精霊が宿る」と大切にした5本の椎の木が茂り、木曽の寝覚めの床をイメージした岩組に川が流れる豊かな自然や景観の中に、茶室「知足庵」が静かに佇みます。
この三郎記念館に素材や手法が異なる4人のアーティストが集います。近藤正勝(絵画)、中田ナオト(陶)、三田村光土里(写真・インスタレーション)、米山より子(和紙・金工)が、途切れていた不確かで、おぼろげな記憶や気配、みえなくなっていたものを掘り起こして読み解きながら、かつてこの邸宅に住んでいた主へのオマージュともなるそれぞれの表現で、景色、Sceneryをつむぎだします。