「浪速(なにわ)の知の巨人」とも評される木村蒹葭堂(きむらけんかどう)(1736~1802)の研究活動と、文人画家としての足跡を振り返り、交友のあった紀州の文人墨客(ぼっかく)の作品を展観する特別展を開催します。
蒹葭堂は自身の経済力を背景に各地で絵画や珍しい器物を収集して研究し、紀南地方においても貝類の調査などを実施しました。本展では、こうした博物学者としての蒹葭堂の活動を、のこされた日記や彼が調査した田辺の貝類標本などでうかがい、その上で蒹葭堂の漢学の深い素養が発揮された文人画家としての活動を作品とともに紹介します。
また、収集家・博物学者・文人画家として名の知れた、大坂の蒹葭堂宅には日々多くの文人墨客が訪れていました。その中で、蒹葭堂は紀州の文人たちとも密接な交流を持っていたことが、近年さらに明らかになってきています。当地を代表する文人画家、桑山玉洲(くわやまぎょくしゅう)(1746~1799) は蒹葭堂との交わりの中で、自らの絵画表現や画論の着想を得ていたと考えられ、紀州藩士の文人画家、野呂介石(のろかいせき)(1747~1828)や、和歌山城下の吹上寺(すいじょうじ)住職で詩書画を得意とした松丘(しょうきゅう)(1765~1833)らも蒹葭堂と深い交友がありました。こうした紀州の文人たちの作品を、蒹葭堂との関わりとともに伝えます。