十村は、加賀藩・富山藩・大聖寺藩において百姓身分で村方統治を担った役職です。数十か村を束ねた組を任され、郡奉行や改作奉行などから命令を受けて、村の支配に関わる多くの仕事をおこないました。そのため十村のもとでは、仕事をする上で必要な帳簿や文書が数多く作成されたのです。
一方、多くの業務を抱え多忙な日々をおくる中で、生け花や茶の湯を嗜んだり、書画などの品々を収集したりしています。また什器類では、蒔絵を施した器など百姓身分の最高職を務めた家にふさわしい上質なものが揃えられました。さらに、十村役として藩に仕える中で、藩主ゆかりの品を拝領することもあったのです。このような品々は、十村にとってまさに家の「格」を示す品として守り継がれてきました。
当館では、加賀藩の杉野家、富山藩の武藤家と岡崎家の各家に伝わった資料を収蔵しています。本展では、これら館蔵品から読み解くことができる十村の仕事ぶりや、十村の家々で代々守り継がれた「お宝」を紹介します。