多くの表現者たちは“かくれた次元”“かくされた次元”に色や形を与えて、最終成果物へ持ち込むことを行なっているのかもしれない。表現結果がその時代に新鮮さを提供する際には、無いものを在る様に、在るものを無い様にエディットしていくのが表現者の真骨頂なのだと思う。
ただ、かくれた次元をデザインや表現に要素として取り入れたとしても、自己満足で、人とは共有できない。なんらかの外部刺激や時間の変化でめくれてきた次元から、顕在化してきた要素をデザインに取り入れることは、時代の空気を捉えるといったような流行り廃りの話ではなく、物事を捉える“姿勢”の話なのだと信じる。無いものを在る様に、在るものを無い様に。めくれた次元の先との往還を、遊び心を持って愉しむ。YOSHIROTTENはそんな“姿勢”をもった表現者だと思う。
相変わらず会ったときは言葉が少なく、デザインした“ブツ”だけを愛おしそうに見せてくる…物静かな佇まいを纏っているが、彼自身の視覚野では何処か彼方までぶっ飛んでいるのだろう。gggBooks-136 YOSHIROTTEN 序文より抜粋
西野慎二郎
(GAS AS INTERFACE,GASBON METABOLISM,CALM&PUNK GALLERY)
薄暗い部屋でスクリーンセーバー上を浮遊するイメージが発した光は、あらゆる方向に放射され明度を上げ続け空間を満たしていく―本展では、ロゴ、タイプフェイス、アートディレクション、空間デザイン、映像など異なる領域に拡がっていくYOSHIROTTENの「グラフィック」史を表現する一連なりの作品群が展示されます。
YOSHIROTTENにとっての「グラフィック」は、あるアイデアや情報を最小の要素と最大のインパクトで、視覚を通して伝えることだと言います。「R.G.B.」は光で色を表現する際の「3原色」。パンク・ロックはたった「3コード」で世界を変えた。本展の空間に足を踏み入れた時の感情―網膜を通して受容する情報が、言語化される前の「何か」―こそがYOSHIROTTENの「グラフィック」の本質の1つです。