明時代末期の中国・景徳鎮民窯で輸出品として作られた古染付。その器形は様々で、驚くほど軽妙な絵付が施されています。古染付は日本の茶人が注文したものとされ、茶道具としての印象が強い為に一般的には「民藝(民衆的工藝)」の範疇には含まれていません。
しかしながら日本民藝館創設者・柳宗悦(1889~1961)はこれらの器に強く心を惹かれ「真に染付としての生命が甦っている」と賛美し、蒐集しました。精美を誇る官窯陶磁器ではなく、民窯から生まれた特有の味わいを持つ古染付の美しさを、柳は中国人の手と日本人の眼が相俟って活きると書き記しています。
古染付の見どころはなんと言っても飄逸、自由奔放とも評される絵付にあります。人物、動物、草木などがのびやかに描かれ、その妙味は観る者を飽きさせません。材料の収縮率の差によって生じる虫喰と呼ばれる釉薬のほつれもまた景色となり、その粗野な作りがかえって魅力的だと言えるでしょう。
本展では、当館が所蔵する古染付・約50件を一挙に公開すると共に、天啓赤絵も紹介します。天啓赤絵は古染付の一群として位置付けられ、天啓年間(1621~1627)に集中して作られた上絵付が施された器を指します。二度目の焼成時に赤や緑などの色絵(中国では五彩と呼ばれる)が加えられ、華やかで愉しい絵付が現れます。加えて、漳州窯の呉州赤絵と称される色絵磁器、漢・六朝時代に刻まれた石碑の拓本、副葬品である明器や俑など、中国の長い歴史の中から生まれた力強い工芸の数々をご覧いただきます。