まっすぐに画家の路を ~生命の鼓動を感じる風景~
山下大五郎は立軌会の創設メンバーで、全国各地を訪ね歩きながら日本の原風景を描いた洋画家。
学生の頃、萬鉄五郎と出会い「色を濁らせるな」という教えを胸に画家の道へ進む。結婚後は苦しい生活ながらも画家として身近な生活風景の作品を次々と制作した。
戦時中36歳で召集されると、戦後はソ連に抑留され、捕虜生活を3年間送ることになる。家族に会いたい気持ちと再び絵を描きたいという強い気持ちが暗黒の3年間を支えた。色のない国々で過ごした山下は、緑の豊かな日本の景色に改めて感動し、今後日本の自然を描き続けようと決意する。また同志と立軌会を創設し、既存の公募団体とは異なり自由な立場で作品を発表できる場を得ることとなった。
やがて全国各地を訪ね歩き、人々が自然の恩恵を受けながら力強く生きているという証である民家や田畑など、生命の鼓動を感じる風景を描き続けた。
晩年、信州安曇野の地に出会い、アルプスの山並みの高く伸びる面と、鏡に広がる野の横に長く広がる面、このように空間を大きく構えている風景は他にはないと、毎年のように足を運んだ。季節折々の安曇野の風景を描いた作品は人々を魅了し、作家として名を成すこととなる。
本展覧会では、北アルプス展望美術館所蔵の5点を含む、一途に生涯画家として生きた山下大五郎の作品約60点を、4つのステージ《絵画の道へ》《戦争と戦後》《原風景を求めて》《安曇野との出会い》に分けて展示いたします。生活の空気・自然の空気を感じる風景を描くことを意識していた山下の、人間の生命力を感じる美しい日本の原風景をお楽しみください。