上方とは、天皇(上)の住まう方角・地方のこと。主に京や大坂を始めとする五幾内(山城国、和泉国、河内国、摂津国、大和国)を指し、広義には播磨国、丹波国、近江国も含みます。
徳川の世となり、政治の中心は京から江戸へと移ります。しかし、古の風流を残しながらも町人によって繁栄した京の都は、依然として文化や経済において大きな影響力を持ち続けました。大坂は、水運により全国の農産物や海産物、名産品が集う商業都市として大きく発展。旅への関心が高まった江戸中期以降、伊勢神宮から少し足を延ばせば立ち寄ることができる上方は、観光地としても人気を集めました。その活況は、名所や名物、名跡を豊富な挿絵で紹介した名所図会に取り上げられ、浮世絵版画にも描かれています。
本展では、歌川広重の手になる「京都名所之内」や「浪花名所図会」、瀟湘(しょうしょう)八景になぞらえて設定された近江八景など、見どころ満載の上方名所をご紹介します。