三浦市在住の勝又豊子は、1970年代より常に「身体」をテーマにして、立体や写真、ドローイング、映像などを組み合わせた幅広い表現を行ってきました。存在感の強い鉄、レンズで拡大した身体の映像、現実感が希薄なイメージの平面など、異なる物質感をもち触覚を刺激する作品群が、私たちの知覚に強い揺さぶりをかけてきます。
近年は「不在の向こう」と題した発表を続けています。「不在」といっても存在しないわけではなく、目を凝らしてもはっきりしない人間の心理的距離を表しており、現代に生きる人々にとって切実な問題提起をしているのではないでしょうか。本展は勝又豊子が開催する公立美術館で初めての大規模個展であり、近作・新作約15点の作品を通じて、寡黙かつ胸に迫る作品世界をご紹介いたします。