北東北のくらしが生んだやさしい祈りのかたち
江戸時代、寺院の本堂の形状や荘厳(しょうごん)が均一化され、上方や江戸で造られた立派な仏像が日本各地の寺院でご本尊として祀られるようになったいっぽうで、地方の村々で小さなお堂や祠などを拠り所として、素朴でユニークな仏像・神像が祀られました。仏師でも造仏像でもない、大工や木地師(きじし)の手によるこれら民間仏は、端正な顔立ちや姿のご本尊と違って、煌びやかな装飾はありません。
その彫りの拙さやプロポーションのぎこちなさは単にユニークなだけではなく、厳しい風土を生きるみちのくの人々の心情を映した祈りのかたちやそのものといえます。
青森・岩手・秋田の北東北のくらしのなかで、人々の悩みや祈りに耳をかたむけてきた個性派ぞろいの約130点の木象を紹介し、日本の信仰のかたちについて考えます。