タカ・イシイギャラリーは10月31日から11月25日まで、ロザリンド・ナシャシビによる個展「インフィニティ・プール」を開催いたします。女性として描いた道化師パンチネッラや、プールの水面にきらめく色あざやかなさざ波など、ナシャシビの新作絵画は、内的世界と外的世界、そして有限性と無限性のあわいにある境界を浮かび上がらせます。
本展の出品作品はシリーズとして考案されたものではありません。自らをあらたな領域に導いてくれるテーマを選び、受容され得るギリギリのイメージを追い求めるという、作家の常日頃の姿勢から生まれたものです。プールの水面に反射する光と、マットレスの固さや安定感のあいだで、それらの絵画は揺らいでいます。固体と液体のあいだを行き来するような状態は、作家が取り上げるモチーフにも反映されています。道化パンチネッラは女性のような仮面をつけていますが、その身体は女性でも男性でもあるようです。また、男根のシンボルは有限へと変わりつつある無限性、究極の外面性として表現された内面性を暗示しています。
思いつくあらゆるモチーフを自由に探究すると決め、ナシャシビはこれらの絵画を描きました。そこには判読可能なものとそうでないもの、抽象と具象、流れるような早描きとしっかりとした色の塗りつぶしが見られます。輪郭や線がことごとく無視されていると思いきや、そのすぐ横に太く縁取りされた形が現れます。反対の性質のものがこのように並置されることにより、作品には緊張状態が生まれています。「インフィニティ・プール」の水の面には表面性と深遠性が同時に存在する様を見ることができますが、作家にとってはこれこそが絵画についての最大の関心事なのです。
このほか、本展には2019年から続くマルヴォーリオ・シリーズの作品も展示されます。