高知県立高知工業高等学校を卒業後、写真家・杵島隆氏に師事した野町和嘉は、1972年サハラ砂漠への旅をきっかけにアフリカ取材を始めます。その後、過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマとして、中近東、アジア、南米など世界各地の取材に取り組み地球規模での探訪の旅を続け、スケール感のある作品を撮り下ろしていきます。いまや世界を旅するツアーが数多く企画され、インターネットで簡単に映像を見ることができますが、野町がとらえた「世界遺産」は、一点一点見る人に圧倒的な力をもって迫ってきます。それらの作品は、世界遺産が「一度失ったら再現することが不可能な、地球の生態系にとっても普遍的な価値をもつ、人類共通の大切な“宝”」であることを私たちに強く訴えかけてきます。
さらに、本展では「ヒマラヤ仏教圏」をテーマに展示をいたします。ヒマラヤからチベットにかけて、ユーラシアの尾根をなす極限高知には敬虔(けいけん)な仏教圏が広がっています。高知の風土により培われた生命観をもとに、チベットの人々は、インドより受け継いだ仏教信仰を独特の感性で深めていきました。日本をはじめとする他の仏教国が時代とともに俗化していったのとは対照的に、輪廻思想を根底に据えた仏教の教えを益々高めてゆき、独自の社会を築いています。
本展覧会では「世界遺産を撮る」そして「ヒマラヤ仏教圏」の2つのテーマからなる76点の作品を紹介いたします。