美術用語としての「レアリスム(仏)」あるいは「リアリズム(英)」という言葉は、日本語ではしばしば「写実主義」と訳されてきました。しかし、レアリスムは必ずしも具象表現だけを指すのではなく、「現実」を追求する作家の制作態度、内側の芸術性を追求していく抽象表現も含まれるのです。
本展は、この「レアリスム」というキーワードから戦後の具象・抽象美術を読み解くものです。具象美術ではベルナール・ビュフェらが参加した「オム・テモワン(時代の証人者)」というグループや、それと同時代にフランス・パリで開催された「時代の証人画家展」というピカソや藤田嗣治らも参加した展覧会に焦点を当てます。抽象美術では非定形を志向した前衛芸術運動「アンフォルメル」と、この運動の提唱者であるミシェル・タピエと交流のあった「具体美術協会」を取り上げるとともに、抽象表現主義の画家に影響を与えた「シュルレアリスム」を紹介します。また、欧米の美術運動に影響を受けつつも、独自に発展してきた日本の様相を概観していきます。
戦争を経験し、あるいは復興へと向かう激動の時代を生きた芸術家たちによって描かれた様々な「現実」を是非当館でお楽しみください。