熊本市出身で、東京や各地での活動を経て、2020年に熊本県上天草市に居を定めた画家・武内明子。
不知火海を望むのどかなまちで、豊かな自然に包まれながら、日常をみずみずしい色と形で描き出しています。本展は、天草で暮らし始めた武内の新作・近作を発表します。
武内が作品を生み出すときに大切なふたつのこと、それがタイトルにある「空っぽ」と「詩」です。「空(から/くう)」であることとは、さまざまな可能性を呼び込むこと。空である身体は、自らを超えて新しい世界と出会うための扉を開くことができます。描出した色や形、そしてタイトルなど空から生み出されたものが「詩」です。武内は「Y字路のように、一方から絵がやってきて、もう一方から言葉がやってきて、出会った時に一つの道になって完成に向かっていく」と語っています。自らを空っぽの器にして、とりまく風景や支持体にも身をゆだね、対話するように絵筆を動かしていると、空から鳥が舞い降りてそっと枝にとまるように言葉がやってくる。すると、絵と言葉は手を取り合って完成に向かっていくのです。武内の「空」と「詩」の伸びやかな出会いが、作品と出会った人に柔らかな連鎖をもたらすことを願っています。