本展は、美術という枠や社会的評価にとらわれず、様々なジャンルのアーティストによる表現活動に目を向けたシリーズ展第14回として、約40年にわたって絵画を表現手段としてきたアーティスト、長谷川繁による個展を開催します。長谷川は、1988年愛知県立芸術大学大学院を修了後、1989年にヨーロッパに渡り、デュッセルドルフ芸術アカデミー、ヤン・ディベッツ クラスで学びました。1992年からは、アムステルダム中心地にあるビジュアル・アーティストのための国際的なレジデンス施設「デ・アトリエーズ」に2年間在籍しました。この地からの刺激を受けた長谷川は、1996年に帰国し日本に拠点を移してからも、たびたびオランダに滞在しながら、絵を描き続けてきました。
その後、2013年のグループ展を最後に、作品の発表をしばらく休止していましたが、2019年の個展開催を皮切りに展覧会での発表を再開し、現在に至ります。本展では、1989年から92年までのドイツ滞在中に描いた連作をはじめ、オランダ滞在期の大型作品など、そのほとんどが未発表の貴重な作品群を中心に、2000年代以降の作品に加え、近年の内側から発光するような色使いと経験の積み重ねに裏打ちされた画面構成、そして即興ともいえる自在なるモチーフの組み合わせが見事に結実した、今日に至る数多くの仕事の一端を展示します。長谷川の絵画において変わらないもの、刻々と変化してきたものは一体何なのか。そしてその表現から受け取ることができる「豊かな謎」を、それぞれの眼と記憶に刻む展覧会となれば幸いです。