明治時代には、政府が推進する殖産興業、輸出振興政策により、日本の陶磁器が欧米を中心に積極的に輸出されました。その背景には、19世紀後半から欧米でたびたび開催された万国博覧会において、日本の陶磁器が高い評価を得ていたことが挙げられます。
欧米の人々の好みにあうよう制作された東洋的なモチーフと精緻な技巧による絢爛豪華な陶磁器は、ジャポニスムの気運を高めるとともに欧米の陶磁器と相互に影響しあいながら、後のアール・ヌーヴォー、アール・デコへと展開する端緒となりました。
神奈川県内でも1859年の横浜開港を契機に、従来は窯がなかった横浜で陶器生産がはじまり、京都から移り住んだ初代亜宮川香山(みやがわこうざん、1842~1916)が眞葛焼(まくずやき)を試みて好評を博しました。香山が制作した陶器からは、技巧を尽くして世界に挑戦していた明治の陶工の気概が見て取れます。ほかにも素地を産地から取り寄せて横浜で上絵付を施す工場が多数でき、輸出港ならではの賑わいをみせました。
本展は、輸出陶磁器の全盛期である明治時代前半に海外へ輸出された日本各地の陶磁器の里帰り品を皮切りに、明治30年代以降のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しい意匠(デザイン)を取り入れた作品を、公益財団法人横山美術館の名品約130点によりご紹介します。