近代京都において、琳派を手本として創作活動を行った神坂雪佳(1866~1942)。京に生まれた雪佳は、はじめ四条派の画法を学びますが、新しい時代にふさわしい工芸図案の必要性を認識し、図案家の岸光景に師事します。押し寄せる西洋文化を意識しながらも、雪佳は装飾芸術である「琳派」に傾倒し、図案家、画家として活躍しました。
雪佳が手掛けたデザインは、染織、陶芸、漆芸から室内装飾や庭園まで実に多面的です。これは、雪佳が敬愛した本阿弥光悦や尾形光琳の柔軟な活動に倣うものといえるでしょう。琳派は、江戸初期の光悦、俵屋宗達にはじまり、江戸中期の光琳やその弟・尾形乾山、江戸後期の酒井抱一らによって私淑という形で受け継がれてきました。平安以来の美意識をそなえた装飾性豊かな作風で、絵画や工芸といった領域を越え、さまざまな意匠を生み出してきた琳派は、近代以降も多くの分野にわたって影響を与え続けています。
本展では、雪佳が手本とした琳派の美の潮流を光悦や光琳らの名品にたどるとともに、古典と近代的発想を融合させ、美術と意匠の二つの分野を自在に往来した近代琳派・神坂雪佳の多彩な世界をご覧いただきます。