現在私たちが鑑賞している美術品の中には、それぞれの時代の所有者が使用目的に合わせて手をかけ、工夫し、傷んだところを修理しながら今日まで伝えられてきたものが数多くあります。それはまさにサスティナブル、そう今注目されているSDGsの「使う人の責任で、物を大切にする」に通じています。本展ではこうして何百年にもわたって大切にされ、今日まで伝えられてきた美術品をご覧いただきます。
刀剣は、主として自身を守るための「武器」として用いられてきました。そのため戦い方の変化に合わせて刀身を短く切り詰めたり、手入れのために研(と)がれたりして製作当初の姿を変えながらも、現代まで伝えられてきました。また大きな部屋を仕切る襖などに描かれた障壁画を屏風に仕立て直したり、装束は掛軸の本紙を彩る表具裂として再利用されるなど、古の人々の創意工夫によって新たな命を吹き込まれた美術品は、今も私たちの目を愉しませています。その他にも使用した紙の裏を再利用したり、漉き直して再生したりするなど「ものを大切にする」心を、美術品を通して感じることが出来ます。
また、このように大切にされてきた美術品を、私たちは将来の世代に伝えていく使命があります。こうした責務を果たすために林原美術館では、少しずつではありますが、美術品の修理を各機関の補助を受けながら実施しております。本展では当館が貴重な文化財を後世に伝えるために修理を行った作品も併せてご紹介いたします。