江戸時代以来、富山売薬は「越中富山の薬売り」として全国に知られ、日本一の売薬業として発展しました。富山の町は売薬とその関連産業で繁栄し、現在も「薬都」と呼ばれています。その富山町で、江戸時代後期から明治時代にかけて浮世絵版画の文化が花開きました。実は、売薬と浮世絵版画、両者はとても密接な関係にあったのです。
江戸時代後期、富山の売薬さんは、得意先へ進物を配るようになり、その最初に登場した進物が浮世絵版=売薬版画でした。売薬版画は、全国の得意先に配られることから大量の需要が生まれ、このため富山町では数多く出版されたのです。富山の町は、江戸、上方に次ぐ「浮世絵版画の町」だったといっても過言ではないでしょう。
本展では役者絵をはじめ、名所絵や福神絵、武者絵、暦絵、玩具絵、相撲絵、花鳥画など、富山の町で出版され、売薬さんが全国の得意先に配った多彩な作品を紹介します。それらを通して、富山の浮世絵文化に触れていただければ幸いです。