森鴎外と同郷の島根県津和野に生まれた安野光雅は、画家・絵本作家・エッセイスト・イラストレーターなどとして、幅広い活躍をしています。近年は、ラジオ・テレビにも登場し、ますます多くの人々を魅了しています。戦後は教員を務めながら、絵画制作を続けましたが、35歳で教職を離れ、海外に出かけました。
最初の絵本『ふしぎなえ』(1968)は、42歳のときに出版され、『さかさま』『ふしぎなさーかす』を加えて初期の3部作が成立しました。その後の活躍は目覚しく、絵本があいついで出版され、その評価が高まりました。同時にエッセイストとしても活躍し、美術のみならず文学やその他の領域にも才能を発揮していきます。
本展では7部構成で展示し、<旅の絵本><初期の3部作><文字><数><空想と科学><歌><風景画>などの分野に分けてご紹介します。絵本の内容や対象年齢に応じて作風が豊かに変化する安野光雅の世界。トリック・アートの要素を含む『ふしぎなえ』、筋書きと造形が互いに響きあう構成の『天動説の絵本』、子供も大人も楽しめる『旅の絵本』シリーズ、懐かしい唱歌に基づく『歌の絵本』、オランダ・スイス・イタリア・ドイツに関する風景画文集などからの絵本原画作品100点が出品されます。