子どもや毛糸の編み物、動物や草花などをモチーフとして、滑らかな絵肌に描かれた安藤正子の油彩画は、詩的な雰囲気にあふれ、見るものを惹き付けます。油絵具の特質を生かした緻密な描写や、大きな余白などの様々な絵画的要素の中で形作られた油彩画と、精微で硬質な質感の鉛筆画は、制作に時間を要し、年に数点というペースで描かれてきました。
近年、愛知県瀬戸市に移住し、第二子の出産を経て、その地で生み出された陶レリーフの作品群によって、安藤はそれまでの表現から大きな展開を遂げました。また、関連して描かれたドローイング群や絵画作品からは、身近な対象の今を大切にすくい取ろうとする新たな姿勢がうかがえます。
作家の身辺の変化から生じたものを、初期の油彩画や鉛筆画、近年の水彩や木炭のドローイング、陶作品、新作の絵画作品やインスタレーション等、作品の変遷から読み解きます。手法を変化させながらも、一貫して「絵」を作り続けてきた安藤のこれまでの歩みを展覧します。