光や大気は移ろいやすく、実体のつかみづらい要素ですが、私たちの視覚に大きな影響を与えています。
光や大気を作品において表現することは、美術の長い歴史の中で、多くの芸術家の関心を集めてきました。
例えば、鋭い自然観察眼をもっていたレオナルド・ダ・ヴィンチは、遠くのものほど輪郭が不明瞭になり、青みを帯びて見える性質を、空気遠近法として絵画表現に取り入れました。
また、モネなど印象派の画家たちは、戸外に出て同じ風景を何度も描き、季節や時間帯によって様々に変化する光を色彩で巧みに表現しました。東洋の山水画においては、遠くの景色と近くの景色の間に霧や雲を配することで、限られた画面上に、雄大に広がる心象風景を描き出します。
光と大気の表現は、私たちが作品から見て取ることができる奥行きや臨場感、さらに明暗や温度感などの雰囲気と密接に関わっており、作品を彩る構成要素として注目に値するものです。
今回の展覧会では、地域の作家による山水画や風景画を中心に、光や大気を生き生きと感じられる絵画や写真、版画、陶磁器など約60点を紹介します。墨の濃淡や、豊かな色彩が織りなす、自然の情景をお楽しみください。