徳川美術館は、江戸の将軍家に次ぐ格式を誇った尾張徳川家に由来する美術工芸品の数々を所蔵することで知られています。歴代の姫君が直接使用された家具、調度品をはじめ、婚礼家具など多くの由緒ある品々が現在まで連綿と受け継がれています。
大名家に伝わる姫君たちの暮らしは奥と呼ばれるプライベートな場が中心であり、その実態はあまり知られていませんでした。その中で、婚礼など家と家が結びつく華やかな儀式においては惜しみなく費用を注ぎ、化粧道具や文房具などの調度品をはじめ、楽器や衣服など姫君の生活をあやどる日常の道具が用意されました。
今回の展覧会では、誕生・婚礼・出産といった人生の節目の行事に用いられた道具をはじめ、日々の生活で使用した衣装や装身具、調度品、そして楽器や文房具、遊戯具等の文化教養のための道具など156件を〈節目の行事〉〈姫君の装い〉(たしなみと遊び〉の三部構成によって紹介します。尾張徳川家ゆかりの姫君たちの華麗なる暮らしぶりを窺うと同時に、江戸時代の豪奢な大名の文化を知る絶好の機会です。