旅をテーマに世界の都市を歩き、モノクロフィルムで撮影した膨大な数の写真を一枚一枚手作業でコラージュして制作する写真家・西野壮平(1982年― )。デジタルの時代にアナログな手法にこだわり、時間をかけて無数の小さな写真と向き合いながら、細やかに記憶を編み込んでいく。西野の卓越した構成力によって仕上げられた作品は、記憶の断片が有機的につながるひとつの生命体のようであり、その独創的な手法と表現力は国内外で高く評価されています。
西野は大学在学中に歩いて撮影した都市の断片を、記憶をもとに繋ぎ合わせて再構築した地図のような写真作品「Diorama Map」シリーズの制作を開始し、その後は世界各地を訪れて制作・発表してきました。
近年、撮影対象はより広範囲になり、東海道を歩いて約3年の制作期間を経て34メートルの巻物として結実させた《東海道》(2017年)など、大きなプロジェクトに発展しています。また、別府温泉をフィールドに、地元の人々と湯につかって語らいながら撮影した《Diorama Map Beppu》(2021年)が岡本太郎現代芸術賞に入選するなど、その作品は写真という枠を超え広く注目を集めています。
コロナ禍で旅に出ることを制約されている現在、アトリエを構える伊豆の海を撮影するなど、西野は自然との対話を志向する作品にも力を注いでいます。
本展はこれまで海外や首都圏での発表が多かった西野にとって、関西における初めての本格的な個展となります。1点の作品を仕上げるために数千枚、数万枚を貼り合わせるという、まさに心身のエネルギーをぶつけて挑んだ大作の数々をぜひ会場で間近にご覧ください。