「霧の彫刻家」という肩書をもつ中谷芙二子は、令和4年度から令和6年度の3カ年にわたり、「身体との対話」「風景を聴く」「体・音・光」をテーマに「庭園アートプロジェクト」を展開します。《霧の彫刻》は、純粋に水のみを用いて人工的に発生させた霧であり、その発生の方法や舞台は中谷による入念なプランニングに基づきデザインされます。そして、一度発生した霧はその時、その土地の気象に機敏に反応してかたちを変える―いわば"大気による彫刻"です。また、自然に挑みながら自然に委ねていくという意味で、人と自然の協働でもあります。
《霧の彫刻》の中に広がる"真っ白な闇の世界"に身を置くと、五感の全てを駆使して―「身体との対話」を通じて―自然を具体的な環境として知覚することを促されます。"美とは、人それぞれが自分の方法で発見する自然との関係の中に生まれてくるもの"という中谷の美意識が、霧を媒介とした、人と自然の"関係性が生じる場"を創り出します。
「白鷺が飛ぶ」というタイトルには、未来への飛翔に対する願いが込められています。世界文化遺産・国宝「姫路城」、国登録有形文化遺産「姫路市立美術館」、そして13点の彫刻作品が展示された庭園を一望に収める唯一無二の景観のなかで展開される《霧の彫刻》によって、姫路市立美術館の庭園は、姫路の歴史と文化の現代的な価値が創出される場、人々が集いアートを体験できる場となるでしょう。