平山郁夫(ひらやま・いくお/1930~2009年)は、昭和5年広島県瀬戸田町に生まれ、瀬戸内の青い海や緑の島々の織り成す豊かな自然の中で少年期を過ごしました。神秘的な潮の流れや群青色の海は、平山少年の心に大きな影響を及ぼし、画家・平山郁夫の感性は、瀬戸内の風土に育まれたといえましょう。
しかし、昭和20年、中学3年生の時、広島市で被爆。後遺症に苦しみながらも、やがてその体験は、《仏教伝来》を初めとする平和を願う作品を描くことに繋がります。この記念碑的作品《仏教伝来》で日本画壇の一員となった平山郁夫は生涯をかけ、日本文化の源流を求めてシルクロードを取材し多くの作品を残しました。
本展では、その人生をエッセイと共に描いた《道遥かシリーズ》、ライフワークとなった《薬師寺・玄奘三蔵院の大唐西域壁画》の大下図、世界が認める文化としての京都を描いた《平成の洛中洛外シリーズ》、そして限りない郷土愛を注いだ《しまなみ海道シリーズ》で、平山郁夫の画業を振り返ります。