會津八一は、10代のころから万葉集を愛読し、俳句をたしなみ、その興味はやがて歌作へと広がっていきます。この文芸への関心は、単なる生活を彩るための娯楽や暇つぶしではありません。「生活なき文芸は死なり」と述べるほど、八一にとって生活と短歌は、不可分なものでした。
そのように日々の生活を大切にした八一でしたが自宅はいつも雑然と積まれた書物や、書の反故紙であふれ返っていたそうです。また、身なりもくたびれたようなものばかりを着て、髪の毛は伸び乱れ、一見すると脱俗的な人物にも見えたといいます。
八一は奈良の風光や美術を詠んだ短歌が有名ですが、生活に根差した作品も数多く残しています。八一が住んでいた東京・下落合の自然やふるさと新潟の風景を詠んだ秀歌など、暮らしの中から育まれた清澄な作品は、現在も多くの人々に支持されています。
本展では、八一が詠じてきた歌を集めて出版し、読売文学賞を受賞した「會津八一全歌集」の刊行70年を記念して、八一の暮らしの中から生まれた短歌と書を選び出し、彼の生活が垣間見られるような、貴重な作品資料を紹介いたします。
また、第15回を迎えた會津八一の歌を映す秋艸道人賞写真コンテストの入賞入選作品展も同時開催いたします。