赤色には温かみを感じ、青色は冷たく感じる。直線には力強い印象があり、曲線は優雅な印象になる。こうした感覚は、ほとんどの人に共通するものでしょう。画家たちは古来より人物や風景、植物、静物など世界に溢れるあらゆるものを対象にして描いてきました。さらに近代以降は抽象画という新たなジャンルが登場し、具体的なモチーフを簡素な色彩や形に置き換える表現のほか、個人の感情や心理状態といった目には見えないものまでも画面に表そうとしました。画家たちは描く対象をそれぞれに解釈し、人間にとって共通する知覚に訴えかける色や線、かたちを組み合わせることで、自分が構想したイメージを表現してきたのです。
今回の展示では、当館の所蔵作品から「静物画」「躍動感とリズム」「静けさと賑やかさ」「生命力の表現」という4つのテーマに沿って作品を鑑賞しながら、色彩、かたち、筆致、構図など絵画を構成する要素が、私たちの知覚や作品の解釈へどのような影響を与えているのかについて紐解いていきます。