南画の巨匠、田能村竹田(1777~1835)が出現した大分の地では、江戸時代の後半から明治・大正期を通じ、全国的にも稀にみる広汎な南画の展開がみることができます。内容的にもハイレベルな作画を行う南画家を輩出し、いつの頃からか大分地方の南画に対して「豊後南画」という呼称も生まれました。
今年没後60年を迎える甲斐虎山(1867~1961)は、臼杵に生まれ、京都や大分で作画を続けながら、豊後の南画の伝統を昭和時代へとつなげた重要な画人です。竹田や帆足杏雨(1810~84)の作風に学び、やがて朝鮮半島や中国北部を訪れた経験と、生来のセンスを生かした濃厚な墨遣い、垂直方向を強調する独特の構図など、近代における新たな南画のかたちを示しました。
今回は虎山が私淑した竹田や杏雨、虎山と同郷で同世代の加納雨篷(1866~1933)の作品等と共に、迫力ある虎山の大幅、屏風作品を中心にお楽しみいただきます。