1910(明治43)年4月、武者小路実篤や志賀直哉ら学習院の同窓生が中心となって創刊した同人雑誌『白樺』は、関東大震災の影響を受け1923(大正12)年8月号で終刊するまでの13 年5ヶ月の間で、160冊が刊行されました。
参加した同人には、実篤と志賀のほか、有島武郎、里見弴、木下利玄などの文学者がおり、「白樺」は彼らが世に出るきっかけとなった、日本近代文学を語る上で欠くことのできない雑誌です。
『白樺』は個々人が己の「書きたいものを書く場」であったため、同人たちの思想や作品は様々で、一概にその文学的特色を明言できるものではありません。しかし中心となった実篤の作品・思想の影響もあり、雑誌全体のカラーは当時から「人道主義」と称され、自然主義が席巻していた文壇に新しい波を起こすこととなりました。
またこうした文学の分野だけでなく、毎号美術作品の図版を載せるなど、美術の分野にも多大な影響を与えた雑誌『白樺』。2020(令和2)年、創刊から110年を迎えたことを機会に、『白樺』の活動とその影響を「文学」を中心として紹介します。
本展は『白樺』同人たちがどのように文学の道を志し、日本文壇で評価を得てきたのか、何を学び、作品に生かしてきたのか。明治末期から関東大震災までという、大正時代を貫いたその活動を当時の社会の様子を踏まえご紹介します。