近年、茶の湯の成立と展開について、史料に基づいた新たな見解が紹介されるようになりました。茶の湯は、特に珠光を敬愛し、一貫して運び点前の茶を実践した利休によってひろめられ、十六世紀末期に「侘び茶」として大成を果たしました。
また、利休自身が、個々人の創育工夫による新しい茶の湯の世界を認めていましたので、利休の死後、茶の湯は多様化の道をたどることになりました。
利休の後を受けて茶の湯の第一人者となったのは古田織部でした。利休の指導を受け、強い影響下に自らの茶の湯を展開しましたが、それは、静的な端正さを見せる利休の世界とは異なり、華やかな時代相を反映した美意識による「かぶいた」ものでした。
こうした状況を踏まえ、当館で収蔵する茶道具を中心に、当時の茶会風景を紹介し、茶の湯に親しむ方々にこれからの茶の湯を考えるささやかなひと時を提供したいと考えました。この機会にご高覧ください。