現代美術作家・河口多喜男(1940― )は、1970年来、<関係>というテーマの下に様々な現象を視覚化する作品を制作・発表してきました。熱や光、電流といったエネルギーの流れ、鉄や銅の錆による質の変化、さらには種子を鉛で覆う作品など、それらは存在と不在、見えるものと見えないものを対比させながら、人間と物質との間の「気配」や「存在」そのものについてまで“黙示”するものでもあります。
このたび、名古屋市美術館では一連の作品の中で新たな展開を見せる<関係―時のフロッタージュ>(1996―97年)を展示、ご紹介いたします。鉛筆によって和紙にフロッタージュ(擦り出し)された化石のイメージは、天然黄土が混入された蜜蝋で塗られた箱に配されることによって、新たな象徴性を伴って出現します。
「不可視」を「可視」化しながら、見る者を深い思索へと誘う河口龍夫の芸術の琴線に触れる絶好の機会と言えるでしょう。