ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759~1840)は、現在のベルギー南部サン・チュベール出身の、フランスで活躍した植物画家です。植物を愛好したことで知られるルイ16世王妃マリー・アントワネットやナポレオン皇妃ジョゼフィーヌの知遇を得て、フランス動乱の時代を背景に優美な花々の作品を後世にのこしました。ルドゥーテの代表作として名高い『バラ図譜』は、バラの収集にことのほか熱心に取り組んでいたジョゼフィーヌの居館マルメゾン宮殿の庭園に植えられていた多種多様なバラを集成した植物図譜です。『バラ図譜』に収められたバラの花々は、点刻彫版という高難度の技術を用いた銅版画と丹念な手彩色によって、花びら一枚一枚の柔らかな質感や鮮やかな色彩が的確に表現されており、植物学的な観点からも芸術的な観点からも、今なお高く評価されています。
本展覧会では『バラ図譜』の全作品とともに、貴重な肉筆画2点もあわせて紹介します。「花のラファエロ」、「バラのレンブラント」と称えられるルドゥーテが描いた、気品あふれる花々の姿をぜひお楽しみください。