日本近代を代表する画家のひとりである岸田劉生は、白馬会絵画研究所で黒田清輝に指導を受けました。また、美術文芸雑誌『白樺』でポスト印象派の作品と出会い、セザンヌやゴッホらの影響を受けた作品を描きました。やがて、対象の内面に潜む美を追求するようになり、北方ルネサンスの画家アルブレヒト・デューラーやヤン・ファン・エイクらの作品を規範として、娘の麗子や照子を描いた魅惑的な肖像画を生み出します。一方で晩年の岸田劉生は、独自の道を極めんと邁進し、西洋美術の影響を乗り越えるかのように、日本画や木版、装丁画などの制作にも励むようになりました。
本展では、没後90年経った岸田劉生の画業を改めて振り返り、西洋美術の受容とその超克の在り方を検証し、写実から写意の表現へと至る変遷を、風景画や静物画、肖像画、日本画、装丁画など、笠間日動美術館のコレクションを中心に約160点の作品を通して展観します。