波打つ布の空間へ
私は1968年の個展で、ハンカチ状の布を拡大して糸で吊ったり引っ張ったりして、布が作り出す弛みや張りを生かした造形を空間として発表した。布は自分では自立しない。何かの物体や構造的支持があってはじめて、布の特質を発揮することが出来る。そのことは布がその周囲の空間的存在に反応する素材でもあると考えてきた。
私の制作のテーマは空間表現である。初期には彫刻芸術との対比として、さらに空間そのものへの表現へと拡大していき、最近は観客が立ち入ることの出来る空間、環境としての空間表現へと、その視点が大きく変化した。そのため、木材による布への支持や竹材のしなやかさを加え、大きなスペースに対応した柔軟な構造の空間を可能にしている。
2014年からは、一転して初期の糸と布だけの造形で、内部空間を含んだ緩やかな布の表面の変化に着目している。一枚の大きな布を糸で吊り上げて行き、どのような空間になるのか、実験的態度の展示の先に、新しい波打つ空間の出現を楽しみにしている。 庄司 達