犬塚勉(いぬづかつとむ)(1949-1988)は、川崎市に生まれ、豊かな自然の残る西多摩郡稲城村(現・稲城市)で少年時代を過ごしました。小学校時代に見た三沢川の光景が描きたいという思いから画家を志し、東京学芸大学に進学。大学院修了後は、中学校の美術教師をしながら、画家となることをめざしていました。
しかし、ようやく独自の画風を確立した矢先に、38歳の短い生涯を谷川岳で終えています。志半ばながら、犬塚の遺した作品は、遺族によって大切に保管されました。そして没後20年にあたる2009年7月にNHKの『日曜美術館』で作品が紹介されると、“犬塚の風景画” は一躍注目され、いまなお多くの人を魅了し、愛され続けています。
特定の場所を精密に描いた犬塚の作品は、精緻に再現された風景画でありながら、観る人それぞれの記憶の中に残るある日の光景を想起させ、懐かしささえ感じさせます。
本展では、犬塚勉の画家としてのはじまりから、画風を確立させた晩年の5年間の作品を中心に100点を展示し、画家・犬塚勉の足跡をたどります。また、会期中には東海大学学芸員資格課程の学生と協力したワークショップを行い、犬塚のさらなる魅力に迫ります。