原田郁は、風景や室内を鮮やかな色面で描き出します。光が降り注ぎ影をつくり、さわやかな風が吹き抜けるその空間は、しかしどこか均質で、具体的な場所を示しているわけではなさそうです。実はそれらは原田郁が作り出した仮想の世界で、この10年の年月をかけて徐々に形づくられてきました。もうひとつの世界。そこには想像力が自由に羽を広げる楽しさがあり、いつでも戻ることのできる心やすさがあります。
今回は、こうした原田郁の想像のルーツを少しだけ紹介するとともに、絵画制作のプロセスを丁寧にお見せします。もうひとつの世界の地図は、どのように私たちの前に現れてくるでしょうか。どうぞご期待ください。