世界各地を旅しながら、パステルによる鮮やかな風景画を多く残した、横須賀出身の画家・矢崎千代二(1872-1947)の作品を紹介します。
現在の横須賀市汐入に生まれた矢崎千代二は、早くから洋画を学び、東京美術学校で黒田清輝に師事、当時最先端だった外光派の画風を身につけました。明治36(1903)年の内国勧業博覧会に出品した《教鵡》(きょうむ)で3等賞を受賞、その後万国博覧会事務局員として渡米、さらにヨーロッパを巡遊します。帰国後は白馬会展や官展に出品を重ねました。
大正期には、それまでの油彩から、持ち運びや速写性、発色に優れたパステル画へと転向、国内外のさまざまな場所を訪れて制作するようになります。昭和2(1927)年には日本パステル画会の創設に参加し、パステルの普及、後進の指導につとめました。
横須賀市では、昭和62年に回顧展を開催。横須賀美術館開館後は、所蔵品展の特集展示として、平成22年度に「矢崎千代二の人物と風景」、平成23年度には矢崎作品を主とした「パステルと水彩による風景画―木下コレクション」を行ってきました。今回の回顧展では、こうした蓄積に、近年の新たな研究動向を加えて、地域ゆかりの画家についての情報集約と発信をはかります。