大久保智睦氏は、1978年に東京都に生まれ、2009年東京藝術大学大学院美術研究科日本画博士後期課程を修了、博士号(美術)を取得しました。院展(院友)、個展、グループ展などで作品を発表し、精力的に活動を続けている日本画家です。
普段見慣れているはずの平凡な風景の中に、異質の存在が「鏡映」し、様々な図像が重なり合っている印象的な作風は、これまでの日本画とは一線を画し、伝統的な日本画技法を駆使しながらも、新しい表現を追求しています。
大久保氏の制作活動は、画家の目を通して見た現代におけるあえかな生命力を表現しています。画家の郷里は茅野市にあるため、幼いころから諏訪地域に親しみ、諏訪での自然と東京都での自然という、重層的な自然が、自身の中で原風景として混在していることを意識し、作品化しています。「鏡映」空間の中には、ふと心にとまった風景や動植物などが、淡い陰影を持って映り込み、鏡の中の別世界を形成するような広がりを見せます。
今回の展覧会では、東京藝術大学在学中の作品をはじめ、同大学買上となった修了制作国宝「源氏物語絵巻」の現状模写、院展出品作を中心に、約60点を展示、大久保氏のこれまでの画業を一望していただくことになりました。ぜひ、ご高覧ください。