屏風は室内の間仕切りとして日常生活の中の調度として使用されてきました。生活用具の中でもハレの場で使う屏風には特別の趣向が凝らされたり、祝いの場に相応しいデザイン・モチーフが選ばれたりしました。その特別注文に応えたのは必ずしも名のある画工たちばかりではありませんでした。掛軸や屏風などの制作を主な仕事とする職人集団である絵屋と呼ばれる工房などでは、無名の画工たちが、従来の慣例にとらわれない、斬新なアイディアのもと奇抜な作品を生み出していったのです。こうした屏風は、従来の作家主義・名品主義の美術史の視点からは無視され、忘れられてきた作品群です。
しかし、これらの作品を江戸時代の重要な美意識である、生き粋という概念でとらえ直してみると、小粋で洒脱なものが案外多いのです。このような概念で、従来看過されてきた作品群を見直し、粋な屏風を抽出してみると、そこには江戸時代人の時代の好尚と、現代にも通ずる意外なデザイン性が見えてくるのです。
当館ではこうした主旨で平成2年に「ちょっと小粋な江戸屏風」展を開催いたしました。それから12年。新たに見出された小粋な屏風を一堂に集め展示いたします。