菊人形とは、手足・頭は人形、衣装は菊の花で造られた等身大の人形です。二本松(福島県)や枚方(大阪府)など全国20か所以上で菊人形展が開かれ、文京区内でも湯島天満宮・菊まつりで数体が飾られて、秋を彩る風物詩となっています。
菊人形の起源は、菊を使って動物や富士山等をかたどった「菊細工(造り菊)」です。巣鴨・染井・馬込あたりの植木屋が手がけた菊細工が、文政期頃(19世紀初め)から数度ブームとなり、その後、幕末から明治にかけて、その中心が団子坂(現・文京区千駄木)に移ります。
団子坂菊人形の全盛期は明治20~30年代で、坂の両脇に軒を連ねた小屋では、評判の歌舞伎狂言や戦争などのニュースがだし物となり、大仕掛を競い合ったり、生人形師による迫真の頭が呼び物となって、人びとが群集しました。その後は名古屋・岐阜の興行師を中心に、全国各地に菊人形が広まっていき、現在にいたっています。その製作技術も、菊師や菊人形師などの職人たちによって現代まで伝承されています。
菊人形今昔―本展では、関連資料約200点を展示し、団子坂から今に伝わる菊人形の誕生・反映・発展・魅力・歴史・伝統に迫ります。