古来から人間の生活と深く関わってきた竹は、植物学の上ではイネ科に属し、世界で1,200種、日本で600種と極めて多くの種類があります。しかしながら竹細工に使用できる品種は、ほんの数十種類といわれています。
竹工芸界で初の人間国宝に認定された生野祥雲斎は、竹そのものがもつ素材の力を大切にした竹工芸家でした。竹の成長は早く、ことに竹の子から一本立ちする時には、一晩で30センチメートル伸びることもあり、成長期が終わるのはおよそ3年といわれ、祥雲斎は真竹の3年ものをよく使いました。11~12月、自宅の裏山の竹林で、肉の厚さ・節の具合・肌合いなどを吟味していると、「これは」という竹は100本に1本あるかないかだといいます。1日に何キロメートルも歩きまわって竹を探し、伐採・油抜きといった制作までの全ての工程を自分で行いました。
今展では、祥雲斎が若い頃から追い求め、晩年には「筒に始まり筒に終わる」とまで述懐した、竹そのものの素材力を見せる「通筒」「くいな笛」という2つの筒ものを中心に、竹の表情がストレートにあふれ出る作品と竹の種類などを紹介します。