古くから多くの芸術家が自然と対話し、そこで感じ得たものを表現に結びつけてきました。眼前に広がる自然を描いた風景画はもちろん、一見、自然とは結びつかないような抽象作品においても、自然から着想を得たものが少なくありません。
豊かさや神聖さ、ときに恐ろしさも見せる自然。大いなる自然を前にした作家は、その中から心の琴線にふれる表情やイメージをつかまえ、それらを作品として結実させます。自然の何をつかまえ、どのように表したのか。そこには、作家の精神や造形感覚が色濃く反映されています。
本展では、捉え難く深遠な自然のモティーフである「風」「水」「森」に注目し、当館の絵画や彫刻などをご覧いただきます。海岸に吹き荒れる「風」の激しさを奔放な筆致でとらえた木田金次郎の油彩画や、「水」の循環をテーマとし、石という素材で表した寺田栄の彫刻、「森」の畏怖をみつめ、チェンソーで荒々しく削りだした戸谷茂雄の木彫など、作家たちが独自の視座でつかまえ、それぞれの手法で生み出した豊穣な自然のイメージを紹介します。