郷土文化に関する企画として、庄内で活躍し、地域の芸術の発展に貢献した作家を紹介する展覧会「庄内の美術家たち10 追想・明治の絵師 加藤雪窓」展を開催します。
加藤雪窓 (せっそう) は明治5(1872)年、旧秋田藩士の家に生まれました。幼くして父親を失い、漢学に通じていた祖父久恒(主鈴)に育てられ、書を大越関石、絵を小室秀俊(怡々斎)に学びました。廃藩後の情勢のなか、久恒は秋田を離れ、早くして才気を見せた孫とともに諸国遊歴の旅に出ました。書や絵を糧にし、酒田、上州、関東など、約7年にわたる旅程の末、ようやくふたりが身を落ち着かせたのが港町酒田でした。
この地で友人たちに恵まれた加藤雪窓は、明治29(1896)年、本格的な画業研鑚のために上京し、当時の日本美術界の重鎮のひとりである橋本雅邦に入門します。西洋画の影響を受け、新たな日本画の創造を目指す中央画壇の画家たちのなかでも、幼少から鍛え上げた加藤雪窓の腕は早くから認められ、日本絵画協会をはじめとして、多くの展覧会で彼の絵が賞を受賞し、宮内省の買上げになった作品もありました。明治34(1901)年には一家で東京に居を構え、画家として邁進していくも、師の橋本雅邦がこの世を去った明治41(1908)年、突如、加藤雪窓は東京から酒田へ帰り、以降、大正7(1918)年に没するまで、同地で旧知の者たちと交流し、時に旅をし、また、筆を執り続けて、酒田の絵師として生涯を終えました。
本展覧会では、加藤雪窓を明治から大正へと至る時代のなかで見直すとともに、彼が描いた人物図や山水図などの屏風や掛軸、約20作品を展覧します。