そこに内在する生命をも表出させるかのような、勢いのある筆触で対象を把握し、鮮やかな色彩の効果で空間を構成する原勝四郎の作品は、今なお多くの人を魅了し続けています。
原が当地で亡くなってから50年を迎えることを機会に、当館が収集をすすめてきた作品を軸にして、その芸術を振り返りたいと思います。
原は1886(明治19)年に田辺市に生まれ、田辺中学校(現・田辺高等学校)を卒業した後、上京して洋画を学びました。しかし、輸入されてくるものを通じてではなく、本場で西洋の芸術を学びたいという強い思いから、無理をして第一次世界大戦下のパリに渡り、その後フランス各地、アルジェリアを苦難のなか放浪して帰国しました。その後は郷里で制作を重ね、1927(昭和2)年頃から自身の表現をつかみとって、その芸術を開花させました。
中央での作品の発表は、戦前は二科展、戦後は二紀展への出品にほぼ限られていたために、生前その作品が広範に知られ、充分な評価がされるにはなかなかいたりませんでしたが、没後残された作品が集中して紹介される機会を重ねると、その都度、原の表現は、西洋絵画の単なる模倣でない近代日本の洋画家独自のものとして、評価を高めてきました。
この小企画展によっても、原勝四郎の作品の魅力を改めて広くお伝えすることができればと思います。