古くからガラス工芸が息づくイタリアのヴェネチア。レースガラスをはじめとする美しいガラス工芸品は、ヴェネチアの重要な交易品として輸出され、ヨーロッパの王侯貴族達を魅了してきました。ヴェネチアン・グラス最大の魅力である、溶けたガラスを使った細やかな細工や繊細な装飾模様、そして柔らかい曲線のフォルムを持つガラス器は、現在も伝統の技を受け継ぐ職人達によって作られています。
20世紀になると、ヴェネチアのガラス工房では伝統的なガラス器を制作する一方で、建築家や芸術家をデザイナーとして招き、現代的なデザインを施した新しいスタイルのガラス作品が作られ始めます。1950年代には、ガラスを素材として用いて芸術作品を生み出そうとする動きが高まり、ヴェネチアの職人とデザイナー達のコラボレーションによる作品が数多く制作されました。
イタリアのガラス彫刻クリエイターのエジディオ・コスタンチーニもまた、自身のフッチーナ・デリ・アンジェリ工房にて、ピカソやシャガールをはじめとする芸術家達のデザインを基に、ヴェネチアの伝統の技をいかしながら、それまでにない芸術性の高いガラス彫刻作品を制作しています。
本展では、当館が収蔵するコスタンチーニ作品全43点を、期間中一部の作品を入れ替えながらご紹介します。芸術家達の自由な発想力と、ヴェネチアの伝統的な技をいかして制作されたガラス造形作品をご覧ください。