いつの時代も人々の心を惹きつけてきた金と銀。日本では、その光り輝く美しさを古くから絵画に活かしてきました。時代により使われ方に違いはありますが、独創性と革新性という点で、最も大きな飛躍を遂げたのが明治時代以降の日本画といえるでしょう。
横山大観は、柔和な光の表現を求め、金箔を裏面に用いた特殊な和紙を用い《喜撰山》(山種美術館)を完成させ、また、速水御舟は、金砂子を敷き詰める撒 (ま) きつぶしの技法で《名樹散椿》【重要文化財】(山種美術館)の空間を表現しました。戦後になると新たな局面を迎え、加山又造《華扇屛風》(山種美術館)をはじめとした、金銀の素材の可能性を追求しつつ、古典と現代の感覚を融合した作品も生み出されます。
本展では、近代・現代の画家が用いた金と銀の表現の足跡をたどるとともに、その発想の源となった平安時代の料紙装飾や江戸時代の琳派の絵画などもあわせて展示します。また、作品中に用いられた様々な技法を再現する見本を新たに制作し、金と銀の素材に技を込めた画家たちの試みにも迫ります。今なお私たちを魅了し、輝き続ける金と銀の世界をご堪能ください。