今展は、江戸時代につくられた伊万里焼の中から“水”をテーマに取り上げ、暑い夏に一時の“涼”を感じさせるうつわの数々をご紹介致します。
日本初の磁器として17世紀初頭に肥前地方で製造が始まった伊万里焼。初期につくられた皿や水指などの製品には、当時日本国内で人気の高かった中国製の染付磁器などから模倣した山水文が多く描かれました。沢山の水を湛えた情景は、落ち着いた色調の染付や青味がかった磁肌と相まって、涼やかな趣を呈しています。以降、伊万里焼では、固有の形態をもたない水を、瀧文や波濤文、雨文や雪文として巧みに意匠化し描き出してきました。染付の濃淡や型紙刷りなどの技法を駆使してあらわされた水の意匠は、清々しい水辺の空気や、触れた時の冷たさといった“涼”の記憶を呼び起こしてくれます。
また、伊万里焼では水をいれるためのうつわもつくられました。染付の青1色で絵付けされた水注や盃などは、江戸時代の人々の乾いたのどを潤す際にも用いられた事でしょう。このように様々な視点から、伊万里焼にあらわされた“水”模様をご覧いただく、夏にふさわしい企画展です。